7月, 2020年

会長就任挨拶 

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このたび令和2年度の愛知県病院協会総会において会長に選出頂きました伊藤です。

現在新たな感染症COVID-19による全世界の社会経済全体への多大な影響と医療体制の崩壊が伝えられる混乱の中で、愛知県病院協会の会長に就任する責任の重さを痛感しています。最初に可及的速やかに対応しなければならないCOVID-19 について基本的な考えを示します。

わが国では全国の緊急事態宣言が解除されて感染者の減少が報告されており、愛知県の新規感染者においても5月18日以降一日当たり0~2名と感染拡大は収まったように見えますが、東京は新に一日200人を超えるPCR陽性者が発生しています。今は地域によって新規患者発生数に違いがありますが、社会経済活動の活性化と気候等環境の変化に伴って第2波、第3波の襲来は避けることができないと考えられています。まずは愛知県病院協会会員だけでなく、県内すべての医療機関がこの新たな感染症に一致団結し立ち向かうことができる体制の整備が急がれます。COVID-19は未だにその全体像が明確になっておらず特定の集団には死亡のリスクが高い疾病として人々の恐怖の対象であることは世界中の経済活動の縮小や医療機関の機能不全の状況を見るまでもなく明らかです。比較的感染の拡大がコントロールされている日本においても4月から医療機関の極端な受療抑制が起こり、現在も受療低下が継続している状態は、諸外国で起こっている重症患者の爆発的増加を要因とする医療崩壊とは違う形で地域の医療機能がゆっくりとしかし確実に縮小、崩壊し始めている兆候に思えます。全国の病院団体がその状況を緊急調査したところ、コロナ感染者を収容した施設だけでなくほとんどの病院で入院・外来患者の減少と10%を超える収入の低下がみられたとの報告がありました。この状態が継続すればまず独立採算の急性期医療機関が機能不全を起こし、引き続いて亜急性・療養機能の病院の運営に影響を与えることは明らかです。公立医療機関でも企業の業績悪化による地方税の大幅な減収によって来年度以降はその存続すら脅かされる状況になりうる社会情勢ですから、愛知県病院協会としてはまず会員医療機関の現状を正確にかつ早急に把握する必要があります。同時に今回の医療経営環境の劇的な悪化に対して国からは第二次補正予算でこれまで前例がない膨大な補助・支援が提供されています。これらの正確な情報を会員病院に提供すると共に、現場の危機の実態を県と国に訴えかけて補助・支援の強化を実現しなければならないと考えます。

このような緊急時には国や自治体から医療機関への様々な要請も多くなります。これまでも感染者の入院だけでなく協会役員を中心としたご協力により無症候感染者収容施設に医師等を派遣してきました。第2波の発生を見据えて県の要請があれば、さらに多くの会員病院の協力を得ながら県民の命と健康を守るためにできる限りの体制を整備しなければなりません。なにとぞご理解とお力添えをお願いします。

つぎに地域医療構想の進め方について基本的な考え方をお知らせします。

地域医療構想の目的は急速に進展する超高齢化と人口の急速な減少という人口構成の変化とわが国の財政状況逼迫に伴う環境の変化の中で、各地域(主に二次医療圏)における効率的で不足のない医療提供体制を整備することです。高齢者が主たる患者になる近未来では病院完結という概念は成立しなくなり、地域全体で高齢者を支える仕組みに集約が進むと推定されています。これまでのようにそれぞれの病院が周辺の状況を十分把握しないまま生き残りを賭けて過剰な投資を続けることは不可能であるどころか自院の存続の脅威になっていくことは明白です。地域にとって最適な医療・介護の提供体制を新たに構築するには公民の差なく全ての客観的データをさらけ出し、それぞれが担う役割が効率的で一定の水準以上であるかどうかを互いの医療機関同士だけでなく地域のすべての住民が検証できる体制を構築しなければなりません。言葉で表すことは容易ですが長年にわたり守り続けた病院個別主義、情報秘密主義は簡単にはなくすことは困難です。丁寧な情報開示と相互理解が地域医療構想の鍵となりますが、病床過剰が著しい地域では疑心暗鬼と自己主張が先行してしまいがちです。幸いなことに当協会では先々代の加藤林也会長の発案で愛知県病院団体協議会(あいち五病協)が設立され、前会長の浦田士郎先生のご指導により五つの病院団体の相互理解と協調体制が確立されました。あいち五病協はこれまでも県の医療政策に対して現場の実態に即した医療提供体制を整備できるように現場感覚でさまざまな提言をしてまいりました。地域医療構想・医師の働き方改革・医師偏在是正の三位一体改革は国の最重要課題であり愛知県においても改革の実行が急がれています。愛知県病院協会は改革の推進にあたり現場の生の意見を伝えそれを十分に反映させることで、それぞれの二次医療圏の特徴を生かした「ご当地医療体制」を作り上げて国が目指す永続性のある地域医療を守ってまいる所存です。

まさに激動の今、当協会が立ち向かうべき課題は山積しています。一つひとつに真摯に取り組み会員病院にとって最適解が得られるように愛知県や愛知県医師会をはじめとする各医療団体と密接に連携してこの難局を乗り越えてまいりたいと存じます。なにとぞ皆様のお力添えをよろしくお願い申し上げます。

一般社団法人愛知県病院協会 会長 伊 藤 伸 一

                                                  

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